2005-01-03から1日間の記事一覧

ドキュメンタリーが待っていた

マリオは、落ちた。今は落ちてよかったと思っている。しかし、落ちた。事実から目を背けてはいけない。堕ちたと、あえて表記しよう。 そう、3月になって、不合格の通知が、茶色の小さな安っぽい封筒に入れられ、届いた。不合格の文字が透けて読めるほどそれ…

春は巡ってきたか

そんなマリオに、「助監督」の三文字の響きは心地よかったったったった。声に出して呼びたい助監督。聞くとなるとでは大違いの助監督。決してなるもんじゃない助監督。なったら泥沼抜け出せない助監督。略称、女官。いや、助督。チーフ助督にファースト助督…

酒と映画の日々

土曜日、まずは池袋の安い酒場にいき、常連たちと古い映画の話をする。常連の中にふたり、映画大好き人間がいた。ひとりは、かなりの年配で昔からの映画をよーく記憶していた。もしかしたら、その映画を作った監督やスクリプターよりも映画のワンシーンワン…

突然の雷鳴のように

卒業を半年後に控えたその日、マリオは農学部自治会の学生大会の議長をしていた。 どうやら議事も順調に消化し、まばらな議場に倦怠感が漂い始めたころ、議長から見て中央の最も遠い席に座ってスポーツ紙を熱心に読んでいたクラスメートが、あろうことか「マ…

絵のない自画像-2

→絵のない自画像-1 社会に出たマリオが見たものは そう、グリーンサイクルのマリオは卒業した。人よりも大学が好きだったわけではない。しかし、6年たっぷりかけて卒業した。大学院に行ったわけではもちろんない。もしかしたら、人材流出をおそれた大学の…