ゲームオーバー

庁舎を飛び出したマリオは、青色LEDが点灯した信号を渡り、チェックポイントを目指した。詳細を書き記すことは、残念ながらできない。Aさんの説明を、順をおって思い出す。この角を曲がり、しばらく行くと、老舗の○○屋がある。そう。先日もテレビのグルメ番組で紹介されていたからご存じの方も多いだろう。かき揚げ丼がすこぶる美味いのだ。タレが関東風というのだろう、こってりとして香ばしい。揚げ油は当然、上質の胡麻油である。ここで、リンクを張ってご紹介しておきたいぐらいだ。せっかくだから、地図だけでも掲載しておこう。右図のように縮尺を思い切って大きくしたので誰でもわかるに違いない。是非ともご賞味して頂きたい。さぁ、こんなところで道草を食っている暇はない、先を急ごう。
Aさんの指令を声に出して反芻しながら、チェックポイントを探す。ようやく見つけたポイントは、庁舎が間近に見える歩いて1分もかからないところにあった。まるでお釈迦様の掌をさまよっていたかのような錯覚を覚える。彷徨は方向感覚さえも鈍らせる。奉公したいとき親はないとよく言われる所以である。
それはさておき、

古物商七つ道具

そこは、古物商の会長さんの事務所であった。会長さん直々に古物商の七つ道具を手渡してくれるのだ。これで、一人前の古物商としての自覚が芽生えるのだ。古物商がいま、うぶ声をあげた。しかしまだ、蒙古斑は残っている。いつかは消える蒙古斑、アジアの仲間蒙古斑、手を取り合って蒙古斑、世界は一家蒙古斑である。
七つ道具の中でも特に大切なものが、鑑札と古物台帳。それらの説明を受ける。
防犯協会についても説明を受ける。受けるばかりでは心苦しいが、しかたがない。
さぁ、第2ポイントである。この段階の鑑札には、許可番号や名前がまだ入っていない。画竜点睛を欠いている状態といったらお分かりだろうか。否、仏作って魂入れずとも言える。とにかく、このままの状態では、鑑札の鑑札たり得ない状態なのだ。鑑札が可哀想なのだ。
さて、会長さんから指令を、口伝される。またまた、全神経を集中させねばならなかった。もう、極限状態と言えた。
「これを持って、御坊に参られよ。そして、そこの主に渡して、魂を吹き込んでもらうのじゃ」
「いよいよ、仏に魂を! まさに画竜も天に昇るという荒療治ですね」マリオは、勢い込んで身を乗り出すのだった。会長さんは、そんな生まれたばかりの古物商の卵たちを微笑ましく見遣り、次のポイントへと送り出してくれるのが常だったのだ。
もちろん、この七つ道具には、それなりの金子を支払うことが前もって伝えられていたので、クレジットカード決済にすることもなかったのは、言うまでもない。このあたりの費用は、各都道府県によって異なるようだ。