古物商のおっさんへの遙かなる道 -完-

もうできちゃったの?

もう、すっかりお馴染みの所轄署防犯係のAさんは、グリーンサイクルマリオの顔を見たとたんに驚愕の色を浮かべ、それを笑顔で隠そうとした。…ようには、見せなかった。さすがである。これも、日々の訓練のたまものといえるだろう。爪のあかでも頂いて、煎じて飲むほかない。でも、それほどのAさんが、つい言ってしまったのが、冒頭のひと言であった。
賢明なる読者諸兄諸姉は、この連載の初回に「古物商の申請書はネットでも手にはいるが、ぜひとも所轄署に足を運んで手に入れるがいい」と書いたが、覚えておいでのことと信じている。…え? そんなこと、書いてない? 何かの間違いだ。今から書いてもいいが、面倒だから、100歩譲っておきたい。その理由が、この日わかる。そう。申請書を出してくれるのも受理してくれるのも、同じ担当者なら、申請書の書き方を教わっておく方が簡単にことが運ぶのだ。これは、当たり前の話だ。
そう、ついに中高年の憧れのまと「古物商」の申請をいよいよ出す日がやってきたのだ。申請書をもらったのが、まるで昨日のことのように思い出される今日この頃、1月20日のことであった。

Aさんは、そう、永六輔さんではないAさんは、申請書に目を通す。すべて、前日に言われた部分には、書き込みをしておいた。完璧であった。
ここで初めて、Aさんの表情が弛んだ。もう、仲間だ。そんな笑顔だった。いや、そんなつもりじゃなかったのだろうが、そう見えたから仕方がない。