ホップステップ

「なにぃっ!」電話は、所轄署の防犯係、Aさんだった。といっても、永六輔さんではないことは、賢明なる読者諸兄諸姉には説明するまでもないであろう。3回目ともなると、もう、すっかりお馴染みであろうAさん。ぜひ、ご贔屓にしていただければ幸いである。電話の内容は、ここに書くわけにはいかない。だって、連載が終わっちゃうんだもん。
さて、ここで時計の針を1月19日に戻そう。前回は、東京法務局で長ったらしい名称の証明書をもらったところまでお伝えした。そう。「成年者被後見人又は被補佐人に該当しないということの証明書」だ。名前とは裏腹に、案外簡単に手に入った。
そこから、文京区役所まで戻り、こんどは「住民票」「身分証明書」を発行してもらえばいいのだ。ただ。心配事があった。運転免許証もないマリオに、つまり身分を証明するものを持っていないのに、「身分証明書」を出してくれるものだろうか。
一抹の不安を抱き、そびえ立つ26階建ての文京区役所のはるか彼方の2階に行った。
受付の女性に、すぐに聞いた。こういう場合は、あれこれ悩むよりも、すぐに聞くがいい。「身分証明書って、人品卑しき私めにもいただけるものでしょうか?」
その受付の女性と歓談していた男性が、それを小耳に挟んだようで、「こちらへどうぞ」と、先に立って案内してくれるのだ。じつに親切な人で、申請書が束になっている記入台までやってきてくれて、住民票と身分証明書のための申請書を取り出し並べて説明してくれたのだ。もしかして、それまで古物商申請代行業者だったのではないだろうかと疑いをもってしまいそうなくらい、内部事情に通じていた。まさか、マリオが身分証明書をとるためにくるという事情にも通じていたかもしれない。お通じにはやはり食物繊維が肝要だ。
案に相違して、身分証明書もあっさりと発行してもらえた。どうやら、本籍のある役所に行けば出してもらえるということだった。もちろん人品卑しき者でもおそらく出してもらえるだろう。
料金は、文京区の場合数百円の手数料が必要である。これで、許可が得られればやすいものだ、ろう。
忘れていた。あと一つ、問題の証明書?が必要なのだ。
思い出してほしい。green-cycle.netというドメインが確かにマリオが所有し、ここで古物商としての営業をするということを証明する必要があるのだ。プロバイダの提供するサーバーにドメインを設定するだけなら、プロバイダとの契約書でいいのだろうが、独自に取得した場合はいったいどうすればいいのだろう。
考えられるひとつは、whois データベースで検索したものを印刷する手がある。そうだ。それがいい。いや。やっぱり、それだけでは証明にならない。なぜなら、whoisには、適当な情報を書き込めば、そのままそれが表示されるのだ。
証拠能力は、ほとんどないのだ。そのからくりを知っていればだが…。
知りすぎた男・マリオは仕方なく、もうひとつ用意することにした。
ドメインを取得するときの代理店の領収書(メール)である。
この二つをセットにすれば、どうにか信じてもらえるに違いない。

以上で、すべてそろった。意外に早かった。
しかし、もう夕飯前。提出は明日にしようと決めた。
長い長い夜の始まりだった。

最終回へつづく・・・