懐かしや申請書

マリオは、時間もないのに、その自動ドアに魅せられたように引き込まれていった。
受付の感じのよい若者に、「古物商の申請書をいただきたいのです」と、おどおどと演技(そう、あくまでも演技)しながら尋ねるのだった。
言われるままに、3階にいき、生活安全課防犯係の部屋にいく。
すぐに、担当の方が、対応してくれた。ちなみに、ドアはいつだって開かれているようで、ノックも不要と張り紙があった。開かれた警察のイメージそのままである。誰も拒むことはないに違いない、皆さんもどうぞ。とくに自首を考えて悩んでいる方は、すぐにでも、自主的にお訪ねください。
担当のAさんは、もちろん永六輔さんではないことは自明でしょうが、仮にAさんとしましょう、私をいすに座らせ、申請用紙を選んでくれた。マリオの場合、店舗がインターネット上のバーチャルショップということで、どうも、特別な用紙があるらしい。あとになって、これが喧喧囂囂・侃侃諤諤の七転八倒の騒ぎになろうとは、知るよしもなかったのは、毎度のことである。
ところで、申請の用紙は警視庁の場合でいえば、

インターネット上にあった。

それを印刷して書き込めばいいのである。場所は、こちらの書類置き場だ。おそらく他の道府県でも、ネット上にあるにちがいない。
しかし。
声を大にして言いたい。この際、警察署に出向いて、うやうやしく頂戴するのが、古物商のおっさんになる近道といえるのだ。というのも、申請書を受理してくれるのも、その担当の方なのだ。ものには順序というのがあり、受理にも受理のエチケットというものがある。これが世に言う「受理エット」なのだ。
担当の方から、申請書を前にして、こことここにこれこれをかくかくのように書いて、この部分はしかじかのように丸印を、などと丁寧に教えてもらえる。これで、「古物商代行業者」に高い金を払う必要もなくなるというわけだ。とくに、扱う古物については、アドバイスを受けた方がいい。
申請書には、美術品、衣類、自動車、事務機器、写真機などと扱う古物が13の項目にわたって並んでいる。これらの、どれに丸印を付けるかのアドバイスは貴重だ。
ここで、相談して○を付ければ、申請するときも特に説明は必要ないはずだ。
申請書で面白いものを見つけた。許可申請書(URL届出)というものである。一文字一文字ローマ字練習帳のように、URLを書き込むのだ。あの、初めてローマ字を習ったときの練習帳を思い出してもらうと、きっとあまり大きくはずれてはいないに違いない。普段なら、キーボードから打ち込むローマ字を一文字一文字マス目に書き込んでいくと、いつしかURLに神々しささえ感じられてくるから不思議だ。このURLで古物商をやるんだ、という気分が高まってくる。
さて、申請書の書き方は丁寧に教えてもらった。問題は、いくつかの書類を集めなくてはならないのだ。
そのうちのひとつ。この神々しいURLが、確かにマリオの所有するものである、という証拠が必要だというのだ。だいたいが虚言と狂言大好きのマリオだから、口で「僕のです」などといっても信じてもらえないだろうことは明明白白である。
ここで、喧喧囂囂・侃侃諤諤となったわけである。
さて、その七転八倒とは・・・次号を待て! …ください。