ネットが店舗

1月のその日、これを仮に19日としよう。その日、いつものようにウォーキングに出かけたマリオは、お客様から頼まれたメモリを調達すべく秋葉原に向かっていたと思っていただきたい。
グリーンサイクルは東京都の真ん中文京区のほぼ中央に位置している(と、少なくともマリオはそう信じていたから仕方がない)。そこから誰言うともなく「聖地メッカ」と言われているらしい、神さぶるアキバへは、3つのルートが公開されていた。東京以外にお住まいでアキバが架空都市だと思ってらっしゃる方のために、右下に詳細な地図を拡大したものを用意した。上京の際は、プリントアウトして是非ともご活用頂きたい。著作権は放棄しているから転載も自由というオマケ付きだ。これは、まさに転載だけがなし得る思し召しと言うべきだろう。もちろん、この地図がもとで、道に迷って、大学受験に遅刻してしまったなどという事態は、お約束の自己責任とさせていただきたい。業界の常識といえるだろう。
右の地図をご覧いただきたい。1つ目のルートが、本郷三丁目の交差点から、神田明神下をうやうやしく通るルートだ。つぎが、鴎外の作品でも知られる暗闇坂を手探りで進んで人目を忍んで池之端を通るルート。三つ目が、東京大学を乱暴にも突っ切って龍岡門から学問の神様・湯島天神をお参りしながらたどるルートである。
こうして見ると、どうやらアキバは神々に守られているかのようである。まあ、東京都内の道路はすべてがアキバに通じているわけであるからして、どのルートをとってもいいはずではある。
この日マリオは、時節柄か三つ目の湯島天神ルートを選んだ。東大の正門より入りて龍岡門より出でるメインストリームだ。よく「俺は東大を出た」と豪語する人が東大を出るルートと同じルートである。
その正門を入ったあたりで、ふと見上げたところ、一時期「砦」と呼ばれていた安田講堂と目が合ってしまった。相手がまったく動じる様子がなかったので、仕方なく目をそらしたら、文学部の建物に横付けされたクレーン車と目が合ってしまった。凄い車で乗り付ける学生がいるものだ。いや、教官だろうか。しかし、クレーン車ごときに負けてはなるまいと、虚勢を張って振り仰いで睨みつけてやると、なんとまぁ、けなげにも窓ふきをしているのだ。あっぱれ、国立大学である。虚言癖マリオのウソだとお思いでしょうが、右最上段の写真が動かぬ証拠である。マリオが育った田舎の中学校や高校あたりだと、窓ワクにつかまって腕をいっぱいに伸ばし、ぞうきんで窓拭きしたものである。それが、さすがは国立大学。クレーン車である。国民の税金だろうか。などと考えながら、医学部あたりまで来たとき、携帯にメール着信があった。お客様からの中古パソコンのご注文であった。機種は・・・。そう、残り少ない例の人気機種であった。これは、いけない。早く戻って注文の取り次ぎをしないと、タッチの差で売り切れてしまう
そう思い、アキバ詣は午後にでもと思い、江戸時代のお局さんのお名前を載せた「春日通り」を右に折れた。折れたと思ったら、そこは、東京大学と共に歩んだこともあったとも言われる本富士警察署であった。