古物商のおっさんへの遙かなる道 -1-

その名も、あこがれの「古物商」
そうです、グリーンサイクルのマリオは、この時点では代理店販売ということで商品を仕入れることをしていませんでした。だから「古物商」の申請もせずにきたわけです。でも、お客様のニーズは、多様化しています。「ダイナブックのI/Oアダプタが欲しい」「メモリの安いものが欲しい」「バッテリの中古が欲しい」エトセトラエトセトラ。
グリーンサイクルがだんだんお客様から認められてきたといえるからでしょう。ありがたいことです。このご要望にお応えするには、どうしても独自に仕入れなければならないのです。というわけで、あこがれの古物商のおっさんにならなければいけないということに相成ったわけであります。
この「古物商」各都道府県の公安委員会に許可してもらうわけですが、なんだか難しそうな雰囲気です。ネットで検索すると代行業者もあるくらいだから、かなりの難しさ?なんてたじろいだりもします。そこで、どんな書類が必要で、どのように申請して、どんな手続きを経て許可がいただけるのか、リアルタイムに実況していこうと考えました。まぁ、いってみれば、実況中継録画というところでしょうか。ところで、この表題にある「古物商のおっさん…」は、尊敬と羨望をこめて付けた愛称であり、職業的差別を表しているものでは決してありません。子供時代、はやく大人になりたいな、という憧憬の思いを込めたときの「大人」という用字用語とほとんど同値であるといってもいいほどの幼児用語であります。この調子でつづっていくため、「遙かなる道」となるわけでして、決して現実的な道のりが長いというわけではこれも、ないと言わざるを得ません。

ネットが店舗

1月のその日、これを仮に19日としよう。その日、いつものようにウォーキングに出かけたマリオは、お客様から頼まれたメモリを調達すべく秋葉原に向かっていたと思っていただきたい。
グリーンサイクルは東京都の真ん中文京区のほぼ中央に位置している(と、少なくともマリオはそう信じていたから仕方がない)。そこから誰言うともなく「聖地メッカ」と言われているらしい、神さぶるアキバへは、3つのルートが公開されていた。東京以外にお住まいでアキバが架空都市だと思ってらっしゃる方のために、右下に詳細な地図を拡大したものを用意した。上京の際は、プリントアウトして是非ともご活用頂きたい。著作権は放棄しているから転載も自由というオマケ付きだ。これは、まさに転載だけがなし得る思し召しと言うべきだろう。もちろん、この地図がもとで、道に迷って、大学受験に遅刻してしまったなどという事態は、お約束の自己責任とさせていただきたい。業界の常識といえるだろう。
右の地図をご覧いただきたい。1つ目のルートが、本郷三丁目の交差点から、神田明神下をうやうやしく通るルートだ。つぎが、鴎外の作品でも知られる暗闇坂を手探りで進んで人目を忍んで池之端を通るルート。三つ目が、東京大学を乱暴にも突っ切って龍岡門から学問の神様・湯島天神をお参りしながらたどるルートである。
こうして見ると、どうやらアキバは神々に守られているかのようである。まあ、東京都内の道路はすべてがアキバに通じているわけであるからして、どのルートをとってもいいはずではある。
この日マリオは、時節柄か三つ目の湯島天神ルートを選んだ。東大の正門より入りて龍岡門より出でるメインストリームだ。よく「俺は東大を出た」と豪語する人が東大を出るルートと同じルートである。
その正門を入ったあたりで、ふと見上げたところ、一時期「砦」と呼ばれていた安田講堂と目が合ってしまった。相手がまったく動じる様子がなかったので、仕方なく目をそらしたら、文学部の建物に横付けされたクレーン車と目が合ってしまった。凄い車で乗り付ける学生がいるものだ。いや、教官だろうか。しかし、クレーン車ごときに負けてはなるまいと、虚勢を張って振り仰いで睨みつけてやると、なんとまぁ、けなげにも窓ふきをしているのだ。あっぱれ、国立大学である。虚言癖マリオのウソだとお思いでしょうが、右最上段の写真が動かぬ証拠である。マリオが育った田舎の中学校や高校あたりだと、窓ワクにつかまって腕をいっぱいに伸ばし、ぞうきんで窓拭きしたものである。それが、さすがは国立大学。クレーン車である。国民の税金だろうか。などと考えながら、医学部あたりまで来たとき、携帯にメール着信があった。お客様からの中古パソコンのご注文であった。機種は・・・。そう、残り少ない例の人気機種であった。これは、いけない。早く戻って注文の取り次ぎをしないと、タッチの差で売り切れてしまう
そう思い、アキバ詣は午後にでもと思い、江戸時代のお局さんのお名前を載せた「春日通り」を右に折れた。折れたと思ったら、そこは、東京大学と共に歩んだこともあったとも言われる本富士警察署であった。

懐かしや申請書

マリオは、時間もないのに、その自動ドアに魅せられたように引き込まれていった。
受付の感じのよい若者に、「古物商の申請書をいただきたいのです」と、おどおどと演技(そう、あくまでも演技)しながら尋ねるのだった。
言われるままに、3階にいき、生活安全課防犯係の部屋にいく。
すぐに、担当の方が、対応してくれた。ちなみに、ドアはいつだって開かれているようで、ノックも不要と張り紙があった。開かれた警察のイメージそのままである。誰も拒むことはないに違いない、皆さんもどうぞ。とくに自首を考えて悩んでいる方は、すぐにでも、自主的にお訪ねください。
担当のAさんは、もちろん永六輔さんではないことは自明でしょうが、仮にAさんとしましょう、私をいすに座らせ、申請用紙を選んでくれた。マリオの場合、店舗がインターネット上のバーチャルショップということで、どうも、特別な用紙があるらしい。あとになって、これが喧喧囂囂・侃侃諤諤の七転八倒の騒ぎになろうとは、知るよしもなかったのは、毎度のことである。
ところで、申請の用紙は警視庁の場合でいえば、

インターネット上にあった。

それを印刷して書き込めばいいのである。場所は、こちらの書類置き場だ。おそらく他の道府県でも、ネット上にあるにちがいない。
しかし。
声を大にして言いたい。この際、警察署に出向いて、うやうやしく頂戴するのが、古物商のおっさんになる近道といえるのだ。というのも、申請書を受理してくれるのも、その担当の方なのだ。ものには順序というのがあり、受理にも受理のエチケットというものがある。これが世に言う「受理エット」なのだ。
担当の方から、申請書を前にして、こことここにこれこれをかくかくのように書いて、この部分はしかじかのように丸印を、などと丁寧に教えてもらえる。これで、「古物商代行業者」に高い金を払う必要もなくなるというわけだ。とくに、扱う古物については、アドバイスを受けた方がいい。
申請書には、美術品、衣類、自動車、事務機器、写真機などと扱う古物が13の項目にわたって並んでいる。これらの、どれに丸印を付けるかのアドバイスは貴重だ。
ここで、相談して○を付ければ、申請するときも特に説明は必要ないはずだ。
申請書で面白いものを見つけた。許可申請書(URL届出)というものである。一文字一文字ローマ字練習帳のように、URLを書き込むのだ。あの、初めてローマ字を習ったときの練習帳を思い出してもらうと、きっとあまり大きくはずれてはいないに違いない。普段なら、キーボードから打ち込むローマ字を一文字一文字マス目に書き込んでいくと、いつしかURLに神々しささえ感じられてくるから不思議だ。このURLで古物商をやるんだ、という気分が高まってくる。
さて、申請書の書き方は丁寧に教えてもらった。問題は、いくつかの書類を集めなくてはならないのだ。
そのうちのひとつ。この神々しいURLが、確かにマリオの所有するものである、という証拠が必要だというのだ。だいたいが虚言と狂言大好きのマリオだから、口で「僕のです」などといっても信じてもらえないだろうことは明明白白である。
ここで、喧喧囂囂・侃侃諤諤となったわけである。
さて、その七転八倒とは・・・次号を待て! …ください。